Technical information
-
水素は、燃焼すると水に変化して、有害なNOxやCO、および温暖化の原因のCO2が発生しないため、クリーン燃料として期待されています。水素を製造するための原料としては、主にメタンガスが使われます。昨今の世界におけるエネルギー需給は、シェールガスや天然ガスを中心に活発化しており、近い将来はメタンハイドレートの資源化にも成功するでしょう。これら天然ガス資源の主成分はメタンであるため、水素の価格はメタンの価格に強く影響されます。したがって、クリーンな水素社会の実現は、資源学的な見地に立つと、天然ガス利用の普及によって加速されると言えます。現在、世界で実働している水素製造プラントではメタンの水蒸気改質反応で水素が造られています。同プラントの運転中に、リアルタイムで発生している水素の濃度を簡易に計測できれば、反応温度や圧力などのプラント運転のために重要なパラメータを最適値に制御することができます。このため、原料のメタンと共存する水素の濃度を、少量のサンプリングによって計測できる水素濃度センサには高いニーズが存在します。
-
FSLの水素濃度センサは、サンプリングに必要なガス容量が数mLと極めて少量で、その場で簡易に計測できる室温作動のセンサです。メタンガス中の水素濃度計測にも対応可能です。
特徴:水素濃度0.1―99.9%を室温下で計測可能、従来の水素濃度センサでは困難な高濃度を、すばやく計測できるため、水素の製造、貯蔵、利用の現場での活用が期待できます

図1 水素センサの応答性と検量線
-
a)濃度50vol%および0.1vol%の水素ガス濃度を検出
-
b)水素濃度と出力電圧勾配最大値(dv/dt)maxの線形関係に基づく検量線

図2 プロトタイプのセンサ(黒筒)とディスプレー
*現在、装置の小型化および高機能化した市販品を開発中です

図3 センサ内部の断面構造図

図4 電解質の二酸化マンガンの陽子伝導モデル
二酸化マンガンの結晶に含まれる原子間距離が2.57〜2.60Åの酸素原子のペア(stickで表示)が形成するO-Oネットワークを通じて、アノード側(上部)からカソード側(下部)に向かって陽子H+の伝導が生じるモデル。この陽子伝導性が両極間に電気的な分極をもたらし、センサの出力信号電圧が形成されます
-
H.Koyanaka, Y. Ueda, K. Takeuchi, and A. I. Kolesnikov, Effect of crystal structure of manganese dioxide on response for electrolyte of a hydrogen sensor operative at room temperature, Sensors & Actuators: B, Vol. 183, pp. 641-647, (2013)
-
H.Koyanaka, Y. Ueda, K. Takeuchi, and A. I. Kolesnikov, Proton conduction in electrolyte made of manganese dioxide for hydrogen gas sensor, The 14th International Meeting on Chemical Sensors Proceedings, p. 497-499, (2012)
Y. Ueda, Y. Tokuda, T. Yoko, K. Takeuchi, A. I. Kolesnikov, and H. Koyanaka, Electrochemical property of proton-conductive manganese dioxide for sensoring hydrogen gas concentration, Solid State Ionics, 225, 4, pp. 282-285, (2012)
-
Y.Ueda, A. I. Kolesnikov, H. Koyanaka, Sensoring hydrogen gas concentration using electrolyte made of proton conductive manganese dioxide, Sensors & Actuators: B. 155, pp.893-896, (2011)
-
Y.Ueda, M. Tsujimoto, H. Koyanaka, K. Takeuchi, Y. Tokuda, Electrochemical property of hydrogen gas sensor using a manganese dioxide electrolyte, Chemical Sensors, Vol. 26, 31-33, (2010)
H. Koyanaka, Y. Ueda, Hydrogen gas sensor using manganese nano powders, Fuel Cell, Vol.10, No.1, pp.90-94, (2010)
*参考:現在、最新の火力発電所や大規模なプラントでは、COやCO2を回収処理する専用施設を保有するトレンドにあるため、メタンを燃料として使用し、副産物のCOやCO2は回収利用できる。これに対して、小型プラントや自動車では、COやCO2を回収処理できる専用装置を備えることは経済的にも困難であるため、水素を燃料を利用することが温暖化防止や排ガスによる大気汚染を低減させるために好ましい。したがって、今後は大型プラントではメタンの利用が拡大し、小型プラントや家庭では水素利用が進むと予想されます。
最新情報につきましては、Linkedinもご参照下さい。