Technical information
-
FSLでは、半世紀に及ぶ研究活動によって、独自の合成法とその取り扱い法を確立しており、回収対象の水質に応じてリチウムに対する吸着能を最大限に引き出すリチウム回収酸化マンガンを提供します。
-
リチウムは、二次電池やアルミ精錬、安定剤等の医薬品など、多くの分野において現代社会を支えている物質です。しかしながら、資源としてのリチウムは主に南米の塩湖に偏在しているために、日本は安定輸入に努めると共に廃棄電気部品からのリサイクルを進める必要があります。また、将来的には国内の各種工場において冷却水として使われている膨大な海水に溶けているリチウム資源を回収することで、国産資源化することが重要課題とされています。
-
FSLのリチウム吸着剤を樹脂プレート図a に塗布して実際の海水の流れに浸すことで、海水から選択的にリチウムを回収することができます。実際に、面積20 × 20cm2のプレート1枚あたりに海水から吸着した元素を希塩酸に脱着して各元素濃度を調べると、図bの結果が得られます。この結果は、他の元素に比べて海水(天然リチウム濃度:約0.1 mg/L)から回収されたリチウムが強く濃縮・回収されたことがわかります。この結果を分りやすく規格化すると、リチウムの回収率は2.46g LiCl/m2 60 hs に達します。これは北米で算出されるリチウム鉱石 Spodumene 約58gが含有するリチウムに相当する値です。海水中のリチウム埋蔵量は、図cに記述の様に膨大ですので、回収システムを使うことで現在は冷却水としてプラント内を巡っている海水や海水淡水化プラントから発生する高濃度のにがりから、リチウムを分離回収する事業の実用化が予想されます。
-
リチウム吸着剤として有望視されている吸着剤としては、主にスピネル結晶構造を有した二酸化マンガンを水素化した物質が有力です。従来、同物質に関する多くの研究では、同結晶内の水素イオンと液相のリチウムイオンとがイオン交換反応によって吸脱着することが説明されています。しかしながら、水素イオンよりも質量が7倍近く重たいリチウムイオンがイオン交換するエネルギー源がどこからくるのか未解明でした。近年、同結晶が水を酸化分解することで電気エネルギーを自己供給する触媒能をもつことが報告されています。これに加えて、水素化したスピネル結晶の二酸化マンガンは、大気中では室温下であっても乾燥効果によって、その結晶に含まれる水素イオンが酸化されて同結晶から水として抜け、その抜けた分に応じてリチウム吸着量も低下します。このため適切な取り扱いが必要になります。
a)
b)
c)
H. Koyanaka, Y. Ueda, K. Takeuchi, and A. I. Kolesnikov, Effect of crystal structure of manganese dioxide on response for electrolyte of a hydrogen sensor operative at room temperature, Sensors & Actuators: B, Vol. 183, pp. 641-647, (2013)
C.-K. Loong and H. Koyanaka : Harvesting precious metals and removing contaminants from natural waters - Can neutrons benefit industrial researchers in Japan, J. Neutron Res. Vol. 13, (1-3), pp.15-19, Mar-Sep., (2005)
-
H.Koyanaka: Quantitative correlation between Li absorption and H content in Manganese Oxide Spinel λ-MnO2, J. Electroanalytical Chemistry, Vol. 559, Nov p.77-81, (2003)
古屋仲秀樹:吸着プレート法による海水からのリチウム採取, 資源と素材, Vol.113, No.4, p.275-279, (1997)
古屋仲秀樹・古屋仲芳男・沼田芳明・若松貴英:秋田県地熱水からの有効成分の採取, 資源処理技術, Vol.43, No.2, p.60-67, (1996)
特許第3078342(特願平03-060210)リチウム吸着剤・科学技術振興事業団・古屋仲芳男